写真・図版
晴天にきらめく釧路湿原の小川=2025年2月19日、野村良太さん提供

野村良太の山あり谷あり大志あり:20

2022年に前人未到の北海道分水嶺(ぶんすいれい)積雪期単独縦断を達成し、28歳で植村直己冒険賞を受賞した道内の山岳ガイド野村良太さんのコラム(紙面は北海道支社版掲載)です。

 釧路湿原は道内に7カ所ある国立公園のひとつで、ラムサール条約にも登録されている。その湿原の冬の姿を放送する番組に撮影サポートで同行する仕事をいただき、札幌から車で5時間かけて釧路へと向かった。

 湿原には目立った山はないこともあり、縁がなかったので、新鮮な気持ちで乗り込んだ。

 今回の仕事は、撮影班の安全管理と機材の歩荷(ぼっか)だが、個人的にはもう一つもくろみがある。撮影許可を取ってのロケでは、普段は立ち入りが制限された特別保護区に滞在できる。これはもしや、またとないチャンスなのではないか。裏テーマとして、この連載用の絶景写真を収めたい。狙うは、素人でも撮れるここだけの一枚である。

 撮影は、特別天然記念物でアイヌの人々がサロルンカムイ(湿原の神様)と呼んだタンチョウに始まり、湿原内のリバーカヤック、縄文時代までは海だったキラコタン岬までのスノーシュートレッキングと続く。

 スゲ類が地下茎を伸ばして40センチほどの株を作ったヤチボウズがかわいらしい。道中では多くの野生動物に出合え、終始和やかな雰囲気だ。流れに乗って、いくつかシャッターを切った。

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 スケジュール最終日、エンデ…

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